ネックリフトは、首の皮膚を強く引っ張る手術ではありません

首のたるみやフェイスラインの崩れは、単に「皮膚が余っている」だけで起きるわけではありません。皮膚、脂肪、広頚筋、さらにその深部の組織や骨格など、複数の要素が首の輪郭をつくっています。

そのため当院では、ネックリフトを考えるときに「どれくらい強く皮膚を引くか」よりも、何が首の輪郭を崩しているのかを診断し、必要な組織をどう扱うかを重視しています。

首のたるみは、なぜ皮膚だけを見ても分からないのでしょうか?

首の輪郭には複数の層が関係しています。主に確認するのは次のような要素です。

  • 皮膚の余剰や弾力
  • 顎下を中心とした皮下脂肪
  • 広頚筋(platysma)のゆるみやバンド
  • 広頚筋より深い脂肪
  • 顎二腹筋などの深部組織
  • 顎下腺の形態や突出
  • あご先や下顎骨などの骨格
  • 顔から首へ続く軟部組織の下垂

文献上も、加齢した首を評価する際には皮膚、脂肪、広頚筋だけでなく、下顎縁や舌骨位置などを含めた評価が重要とされています。また、深部の脂肪、顎二腹筋、顎下腺などが首のボリュームや輪郭に関与する場合があります。

つまり、同じ「二重あご」「首が太く見える」という悩みでも、原因は患者さんによって異なります。

「皮膚をもっと強く引けば、首はもっと細くなる」とは限りません

皮膚余剰がある場合には、余分な皮膚を調整することは重要です。しかし、輪郭を崩している主な原因が脂肪や広頚筋、深部構造にある場合、皮膚だけを強く引いても原因そのものは残ります。

反対に、深い組織まで治療すれば必ず良いわけでもありません。深部への処置は必要な患者さんに選択して行うものであり、治療範囲が広がれば固有のリスクも増えます。

大切なのは、強く治療することではなく、必要な場所を必要なだけ治療することです。

当院ではネックリフトの診察で何を見ていますか?

当院では、まず患者さんが気にしている場所と、実際に輪郭を崩している原因が一致しているかを確認します。

例えば「顎下の脂肪が気になる」という場合でも、診察すると、

  • 皮下脂肪が主な原因なのか
  • 広頚筋のゆるみが強いのか
  • 深部のボリュームが関係しているのか
  • あごや下顎骨の骨格が輪郭に影響しているのか
  • 顔のたるみが首まで連続しているのか

によって治療方法は変わります。

顔面若返りでは、「減らしたいボリューム」と「上げたい組織」を分けて考えることも重要です。脂肪についても、多く取れば取るほど良いとは考えません。将来の加齢や他の治療の可能性まで考え、残した方がよいボリュームと減らした方がよいボリュームを分けて判断します。

ネックリフトでは、実際にどの組織を治療しますか?

当院では、顎下に約3〜4cmの切開を置き、広頚筋の状態を確認して中央部を調整するmedial platysmaplastyを基本としています。

患者さんの解剖によっては、広頚筋より深い脂肪や顎二腹筋、顎下腺などが輪郭に関与していることがあります。その場合には、必要性とリスクを検討したうえで、対象となる構造への処置を追加することがあります。

フェイスリフトを同時に行う場合には、外側の広頚筋も含めて顔から首まで連続した輪郭を調整します。

すべての患者さんに同じ処置を行うわけではありません。診察で原因を分け、必要な範囲を決めます。

ネックリフトと顎下脂肪吸引はどう違いますか?

顎下脂肪吸引は、主に余分な脂肪を減らす治療です。ネックリフトは、脂肪だけでなく広頚筋や皮膚余剰、必要に応じて深部構造まで含めて首の輪郭を再構成する手術です。

皮膚の弾力が保たれ、皮下脂肪が主な原因であれば、脂肪吸引だけで十分な場合があります。

一方で、皮膚余剰や広頚筋のゆるみが強い場合、脂肪だけを減らしても期待する輪郭にならないことがあります。また、脂肪を過度に吸引すると、たるみや凹凸が目立つ可能性もあるため、当院では「取れる脂肪を全部取る」という考え方では治療していません。

ネックリフトだけでよい場合と、フェイスリフトも必要な場合があります

首の問題が中心で、顔の下垂が比較的少ない場合には、首を中心とした治療を検討できます。

しかし、jowl(口元から下顎縁のもたつき)やフェイスラインの下垂が首まで連続している場合、首だけを治療すると顔と首の境界に下垂が残ることがあります。その場合には、フェイスリフトとネックリフトを一緒に検討した方が自然な輪郭を作りやすいことがあります。

「ネックリフトが必要か」「フェイスリフトまで必要か」は年齢だけでは決めません。皮膚余剰、脂肪、広頚筋、顔から首への下垂、骨格、希望する変化量とダウンタイムを総合して判断します。

ネックリフトにも限界があります

ネックリフトは首の輪郭を改善するための手術ですが、どのような骨格でも同じ輪郭にできるわけではありません。

例えば、あごの前方への突出が少ない場合や、舌骨位置など骨格・深部解剖の影響が強い場合には、軟部組織を治療しても得られる首とあごの境界の角度(cervicomental angle)には限界があります。

また、加齢は手術後も続くため、将来的に再び皮膚や軟部組織の変化が生じる可能性があります。

ネックリフトの麻酔・術後経過

当院では全身麻酔を基本とし、手術範囲によって静脈麻酔と使い分けます。全身麻酔を行う場合は、原則として麻酔科医が担当します。ネックリフトは通常1回の手術として行います。

手術後は基本的に圧迫を行い、ドレーンを留置することがあります。ドレーンを使用した場合は翌日または翌々日に診察し、抜糸・抜鉤は術後7〜10日程度が目安です。その後は1か月、3か月頃に経過を確認し、最終的な仕上がりは6か月以上かけて評価します。

術後経過には個人差があり、治療範囲や経過によって診察時期が変わる場合があります。

主なリスク・副作用

ネックリフトでは、腫れ、内出血、痛み、出血、血腫、漿液腫、感染、創傷治癒の遅れ、皮膚障害・皮膚壊死、瘢痕、左右差、輪郭の凹凸、つっぱり感、知覚の変化、効果不足、再下垂、希望した仕上がりとの差などが生じる可能性があります。

深部の操作を行う場合には、顔面神経の枝など周囲組織への障害が生じる可能性があります。顎下腺への処置を行う場合には、出血、唾液の貯留(sialocele)などの唾液関連合併症や神経障害など、追加のリスクがあります。

リスクは実際に行う手術範囲によって異なるため、診察時に予定する術式に合わせて説明します。

費用

ネックリフト:660,000円〜(税込)

手術範囲、併用術式、麻酔方法などによって総額は異なります。診察後に必要な治療内容と費用をご案内します。

よくある質問

Q. 首のたるみは脂肪吸引だけで改善できますか?

脂肪が主な原因で、皮膚の弾力が保たれている場合には脂肪吸引だけが選択肢になることがあります。一方、皮膚余剰や広頚筋、深部組織などが関与している場合は、脂肪吸引だけでは改善に限界があります。

Q. ネックリフトでは顎下腺を必ず処理しますか?

いいえ。顎下腺を含む深部構造への処置は、輪郭への寄与を診察したうえで必要な場合にのみ検討します。すべての患者さんに行う処置ではありません。

Q. ネックリフトは皮膚を強く引けば効果が高くなりますか?

単純に牽引を強くすればよいとは考えていません。皮膚、脂肪、広頚筋、深部構造、骨格などのうち、どこが輪郭を崩しているのかを診断することが重要です。

Q. フェイスリフトも同時に必要ですか?

顔のjowlや下顎縁の下垂が首まで連続している場合には、フェイスリフトとの併用を検討することがあります。首だけの治療で十分かどうかは診察で判断します。

まとめ

ネックリフトは「首の皮膚をどれだけ強く引くか」を競う手術ではありません。

首の輪郭は、皮膚、脂肪、広頚筋、深部構造、骨格など複数の要素からできています。当院では、何が首やフェイスラインを崩しているのかを診断し、必要な組織を必要な範囲で治療することを重視しています。

首のたるみや二重あごについて「脂肪吸引でよいのか」「ネックリフトが必要なのか」「フェイスリフトも必要なのか」で迷っている場合は、診察で原因を整理したうえで治療方法をご相談いただけます。

関連ページ:
顔面若返り・リフト治療/小顔治療・顔面脂肪吸引

ご予約・ご相談
Web予約/公式LINE/お問い合わせフォーム

執筆・監修

荻島 信也
AZABU AMOUR CLINIC 院長
日本専門医機構認定形成外科専門医

参考文献

  • Feuerstein TF. Preoperative evaluation of the aging neck patient. Facial Plast Surg Clin North Am. 2014. PMID: 24745380.
  • Mejia JD, et al. Isolated management of the aging neck. Semin Plast Surg. 2009. PMID: 21037862.
  • Larson JD, et al. Defining the fat compartments in the neck: a cadaver study. Plast Reconstr Surg. 2014. PMID: 24633742.
  • Su-Genyk P, et al. Deep Neck Contouring through the Ages. Facial Plast Surg. PMID: 38499193.
  • Current Trends in Deep Plane Neck Lifting: A Systematic Review. PMID: 39652837.
  • Auersvald A, Auersvald LA. Management of the Submandibular Gland in Neck Lifts. Clin Plast Surg. 2018. PMID: 30268240.